CO2ナルコーシスは、救急外来やICUで一度は迷うテーマです。
「酸素を入れすぎるとCO2ナルコーシスになる」
この言葉だけが独り歩きすると、現場では少し危ないことがあります。
本当に大切なのは、酸素を怖がることではありません。
低酸素を避けながら、換気不全を早く見つけ、必要ならNIVや挿管人工呼吸で換気を支えることです。
COPD既往のある高齢患者さんが、肺炎疑いで救急搬送されました。
来院時のSpO2は低く、酸素投与でSpO2は改善しました。しかし、その後だんだん眠そうになってきました。
「CO2ナルコーシスかもしれない」と考えたとき、次に何を見るべきでしょうか。
CO2ナルコーシスは、単にPaCO2が高い状態ではなく、CO2貯留により意識障害などの中枢神経症状をきたした臨床症候群です。
診断では、症状だけでなく、血液ガスでPaCO2、pH、HCO3−を確認し、急性なのか、慢性代償があるのか、急性増悪なのかを見ます。
治療では、酸素を完全に止めるのではなく、低酸素を避けながら酸素を調節し、必要に応じてNIVや挿管人工呼吸で換気を支えます。
CO2ナルコーシスとは何か
CO2ナルコーシスとは、血液中の二酸化炭素、つまりPaCO2が上昇し、それに伴って意識障害、傾眠、せん妄、昏睡などの神経症状をきたした状態です。
ただし、厳密には「CO2ナルコーシス」という単一の診断基準があるわけではありません。
臨床的には、以下の3つを組み合わせて考えます。
- 高二酸化炭素血症がある
PaCO2が上昇している。 - 呼吸性アシドーシスがある
pHが低下している。急性なら代償が追いついていない。 - 意識障害などの中枢神経症状がある
傾眠、混乱、せん妄、昏睡などを伴う。
つまり、CO2ナルコーシスは「PaCO2の数字だけ」で診断するものではありません。
PaCO2が高いだけなら「高二酸化炭素血症」です。
そこに急性の呼吸性アシドーシスと意識障害が重なってくると、CO2ナルコーシスとして臨床的に問題になります。
高二酸化炭素血症とCO2ナルコーシスの違い
高二酸化炭素血症とCO2ナルコーシスは、似ていますが同じではありません。
高二酸化炭素血症は、PaCO2が高い状態です。
一方で、CO2ナルコーシスは、高CO2血症により意識障害などの症状が出ている状態です。
ここで重要なのが、急性か慢性かです。
急性高CO2血症
急に換気が悪くなり、PaCO2が急に上がると、代償しきれずpHが下がります。
腎臓による代謝性代償はすぐには追いつかないため、HCO3−はそれほど上がっていないことが多いです。
この場合、pH低下を伴いやすく、意識障害や循環への影響も出やすくなります。
慢性高CO2血症
COPD、肥満低換気症候群、神経筋疾患などでは、普段から慢性的にPaCO2が高い方がいます。
この場合、腎臓が時間をかけてHCO3−を保持し、pHをある程度保っていることがあります。
PaCO2が高くても、pHが比較的保たれていて、HCO3−が高い場合は、慢性代償を考えます。
急性増悪をどう見るか
実臨床で多いのは、慢性高CO2血症の上に、肺炎、COPD急性増悪、心不全、薬剤、疲弊などが重なって、さらにCO2が上がる場面です。
この場合、HCO3−はもともと高いのに、pHが下がります。
つまり、血ガスでは「PaCO2が高い」だけでなく、pH ↓ と HCO3− ↑をセットで見ます。
CO2ナルコーシスを理解するには、PaCO2だけでなく、pH、HCO3−、代償の有無をまとめて読む必要があります。
以下の記事では、初期研修医・救急外来・ICUローテーター向けに、血液ガスのおすすめ本と学び方を整理しています。

CO2ナルコーシスで起こる症状
CO2ナルコーシスの症状は、軽いものから重いものまで幅があります。
初期に見られやすい症状
- 眠気
- 頭痛
- ぼんやりする
- 見当識障害
- 会話がかみ合わない
- 落ち着きがない
- せん妄
進行すると危険な症状
- 傾眠
- 呼びかけへの反応低下
- 呼吸努力の低下
- 昏睡
- 呼吸停止
- 心停止
ただし、これらの症状はCO2ナルコーシスに特異的ではありません。
低酸素、敗血症、低血糖、脳卒中、薬剤性意識障害、電解質異常などでも似た症状が起こります。
「眠いからCO2ナルコーシス」と決めつけないことが大切です。
意識障害を見たら、血液ガス検査、低血糖の存在、バイタルの異常、薬剤使用歴、神経所見、感染の有無、頭蓋内疾患を同時に考えます。
血液ガスでは何を見るか
CO2ナルコーシスを疑ったら、血液ガスを確認します。
動脈血ガスが理想ですが、状況によっては静脈血ガスでスクリーニングすることもあります。ただし、PaCO2や酸素化の評価では動脈血ガスの方が確実です。
見るべき項目
- pH
アシデミア(酸血症)があるか。pHが低いほど急性の問題として重く見ます。 - PaCO2
換気不全の程度を見ます。高いほど危険ですが、数字だけでなくpHとのセットで判断します。 - HCO3−
慢性代償があるかを見ます。HCO3−が高ければ、もともとCO2が高かった可能性を考えます。 - PaO2 / SpO2
低酸素の有無を確認します。CO2が怖いからといって、低酸素を放置してはいけません。 - 乳酸
ショック、敗血症、低灌流の合併を見ます。
急性高CO2性呼吸不全の目安
実臨床では、PaCO2上昇に加えてpH低下を伴う場合、急性高CO2性呼吸不全として対応します。
特にCOPD急性増悪などで、初期治療後もpH < 7.35かつPaCO2高値が続く場合は、NIVの適応を考えます。
PaCO2の絶対値だけで焦るより、「pHがどれくらい下がっているか」「HCO3−がどれくらい上がっているか」「意識と呼吸努力がどう変化しているか」を一緒に見た方が、臨床判断に近づきます。
病態生理:なぜ酸素投与でCO2が上がるのか
CO2ナルコーシスの説明では、よくこう言われます。
「COPDの患者さんは低酸素で呼吸しているから、酸素を入れすぎると呼吸が止まる」
たしかに、酸素投与により換気ドライブが低下する要素はあります。
しかし、これだけでCO2ナルコーシスを理解すると、かなり浅くなります。
実際には、酸素投与後のPaCO2上昇は、呼吸ドライブの低下だけでなく、V/Qミスマッチの悪化、Haldane効果、吸収性無気肺、分時換気量の変化などが組み合わさって起こります。
「低酸素刺激がなくなるから呼吸が止まる」とだけ覚えると、酸素投与そのものを過度に怖がってしまいます。
本当に大切なのは、酸素を止めることではなく、低酸素を避けながら、換気不全を見つけて支えることです。
そもそも呼吸ドライブは何で決まるのか
呼吸は、ざっくり言えば「体内のCO2を捨て、酸素を取り込む」ための運動です。
その中でも、普段の呼吸を強く調節しているのは、酸素よりもCO2とpHです。
PaCO2が上がると、脳脊髄液のpHが低下し、中枢化学受容体が刺激されます。
その結果、換気を増やしてCO2を排出しようとします。
一方、低酸素に対する反応は、主に末梢化学受容体が担います。
PaO2がかなり低下してくると、低酸素刺激によって換気が増えます。
つまり、通常の状態では「CO2が上がるから換気が増える」という調節がかなり重要です。
慢性高CO2血症では何が変わるのか
COPDや肥満低換気症候群、神経筋疾患などで慢性的にPaCO2が高い状態が続くと、体はある程度その状態に適応します。
腎臓はHCO3−を保持し、pHをできるだけ保とうとします。
また、慢性的な高CO2環境では、CO2に対する換気応答が鈍くなっていることがあります。
このような患者さんでは、低酸素刺激が呼吸ドライブの一部として相対的に重要になることがあります。
ただし、ここで大事なのは、「呼吸ドライブが完全に低酸素だけに置き換わる」わけではないという点です。
慢性高CO2血症の患者さんでも、CO2、pH、呼吸仕事量、気道抵抗、筋疲労、意識状態、薬剤など、複数の要素が呼吸を決めています。
「COPDの人は低酸素だけで呼吸している」と覚えるより、
「慢性高CO2血症ではCO2への反応が鈍くなり、低酸素刺激の比重が相対的に上がることがある」
くらいに理解しておく方が、臨床では安全です。

酸素投与でCO2が上がる主な理由
では、なぜ酸素投与でPaCO2が上がるのでしょうか。
ここでは、臨床的に重要な3つに分けて考えます。
1. V/Qミスマッチの悪化
もっとも重要なのは、V/Qミスマッチの悪化です。
V/Qとは、換気と血流のバランスです。
COPDでは、肺の中に「換気が悪い場所」と「比較的換気が保たれている場所」が混在しています。
体は通常、換気が悪く酸素が少ない領域の血管を収縮させ、その場所に流れる血液を減らそうとします。
これを低酸素性肺血管収縮と呼びます。
これは、換気の悪い肺胞に血流を流しすぎないための、ある意味で合理的な調節です。
ところが、高濃度酸素を投与すると、この低酸素性肺血管収縮が解除されやすくなります。
その結果、換気が悪い領域にも血流が流れやすくなります。
酸素は血液に乗りやすくなっても、その領域では換気が悪いため、CO2を十分に捨てられません。
これにより、全体としてPaCO2が上がりやすくなります。
2. Haldane効果
次に重要なのがHaldane効果です。
ヘモグロビンは、酸素が少ない状態ではCO2を比較的多く運ぶことができます。
酸素投与によりヘモグロビンが酸素化されると、CO2を保持する力が下がります。
その結果、血液中にCO2が放出され、PaCO2上昇に寄与します。
これは「換気が止まった」から起こるのではなく、血液中でのCO2運搬の変化として起こる現象です。
3. 換気ドライブ・分時換気量の低下
酸素投与によって、低酸素刺激が弱まり、分時換気量が低下することもあります。
これは、昔から言われてきた「hypoxic drive」の話です。
ただし、ここで強調したいのは、これが唯一の機序ではないということです。
酸素を入れた瞬間に、低酸素刺激が消えて呼吸が完全に止まる、という単純な話ではありません。
実際には、換気ドライブの低下に加えて、V/Qミスマッチの悪化やHaldane効果が重なり、PaCO2が上がります。
「CO2ナルコーシスが怖いから酸素を入れない」は危険です。
低酸素はそれ自体が命に関わります。
酸素は投与する。ただし、目標SpO2を決めて調節し、血液ガスでPaCO2とpHを確認する。この理解が大切です。
だから「酸素を止める」ではなく「換気を見る」
ここまでをまとめると、CO2ナルコーシスの本質は、酸素そのものではなく換気不全です。
酸素を投与するとSpO2は改善します。
しかし、SpO2が良くなっても、CO2が十分に捨てられているとは限りません。
SpO2は酸素化の指標であって、換気の指標ではないからです。
したがって、COPDや慢性高CO2血症リスクのある患者さんが酸素投与後に眠くなってきた場合、見るべきなのはSpO2だけではありません。
- 意識状態
傾眠、見当識障害、せん妄、反応低下がないか。 - 呼吸努力
呼吸数、補助呼吸筋使用、疲弊、胸郭挙上を確認する。 - 血液ガス
PaCO2、pH、HCO3−を見て、急性の換気不全かどうか判断する。 - 酸素目標
高CO2血症リスクがあれば、低酸素を避けつつSpO2 88〜92%を目安に調整する。 - 換気補助
呼吸性アシドーシスや呼吸仕事量増加があれば、NIVや挿管を検討する。
SpO2が上がっても、PaCO2が下がったとは限りません。
酸素化と換気は別の問題です。
CO2ナルコーシスを疑う場面では、SpO2だけでなく血液ガスを見ます。
酸素投与は止めるべきなのか
ここが最も誤解されやすいところです。
CO2ナルコーシスが怖いからといって、酸素を完全に止めればよいわけではありません。
低酸素は、それ自体が危険です。心停止、不整脈、脳障害、臓器障害につながります。
そのため、COPDなど高CO2血症リスクがある患者では、酸素を投与しないのではなく、目標SpO2を決めて調節します。
目標SpO2の考え方
COPDや高CO2血症リスクがある患者では、一般にSpO2 88〜92%を目標に酸素を調節します。
一方、高CO2血症リスクが低い急性疾患では、より高いSpO2目標が設定されることもあります。
ただし、実際には患者背景、血ガス、循環動態、低酸素の程度、治療目標により調整が必要です。
CO2ナルコーシスを疑ったときの対応は、「酸素を切る」ではなく、「血ガスを確認し、酸素を調節し、換気を支える」です。
SpO2だけを見て安心せず、PaCO2とpHを確認します。

CO2ナルコーシスを疑ったときの初期対応
CO2ナルコーシスを疑ったときは、まず患者さんの安全を確保します。
血ガスを待つ間にも、呼吸状態と意識状態は進行することがあります。
- 人を呼ぶ
意識障害を伴う呼吸不全は、一人で粘らない方が安全です。 - 気道・呼吸・循環を確認する
気道閉塞、呼吸努力、胸郭挙上、チアノーゼ、循環不安定を見ます。 - SpO2と波形を確認する
数字だけでなく、波形が信頼できるかを見ます。 - 血液ガスを取る
pH、PaCO2、HCO3−、PaO2、乳酸を確認します。 - 酸素を調節する
高CO2血症リスクがある場合は、低酸素を避けつつ過剰酸素を避けます。 - 換気補助を考える
呼吸性アシドーシス、呼吸仕事量増加、意識障害があれば、NIVや挿管を検討します。
同時に原因治療を進める
CO2ナルコーシスは、最終診断ではなく、換気不全が表に出ている状態です。
背景にある原因を探して治療します。
- COPD急性増悪
- 肺炎
- 心不全
- 気道狭窄
- 気管支喘息重積
- 肥満低換気症候群
- 神経筋疾患
- ALSなどの慢性呼吸不全
- 鎮静薬、睡眠薬、オピオイド
- 術後の低換気
- 人工呼吸器設定の不適合
NIVを考える場面
COPD急性増悪などで、急性高CO2性呼吸不全をきたしている場合、NIVは重要な治療選択肢です。
特に、初期治療後もpH < 7.35かつPaCO2高値が続く場合は、NIVを考えます。
NIVにより、換気を補助し、呼吸仕事量を下げ、気管挿管を回避できる可能性があります。
NIVが向いている状況
- 意識がある程度保たれている
- マスクを受け入れられる
- 喀痰をある程度出せる
- 循環が大きく破綻していない
- 上気道を守る力が残っている
- pHとPaCO2の改善を評価できる体制がある
NIV開始後に見ること
NIVを始めたら、装着して終わりではありません。
最初の1〜2時間が重要です。
- 呼吸数が下がるか
- 呼吸努力が減るか
- 意識が改善するか
- pHが改善するか
- PaCO2が下がるか
- SpO2が目標範囲に入るか
- マスクリークが多すぎないか
- 同調性が悪くないか
CO2ナルコーシスは、酸素化の問題だけでなく「換気不全」の問題です。
NIV、人工呼吸器、換気量、呼吸生理を基礎から整理したい方は、以下の記事も参考にしてください。

挿管を考える場面
NIVは有用ですが、万能ではありません。
次のような場合は、NIVで粘りすぎず、挿管人工呼吸を考えます。
- 呼吸停止、心停止が迫っている
- 意識障害が強く、気道を守れない
- 嘔吐や誤嚥リスクが高い
- 喀痰が多く、自力で排出できない
- 循環不安定がある
- マスクを受け入れられない
- NIV開始後もpHが悪化する
- PaCO2がさらに上がる
- 呼吸努力が改善しない
- 治療方針として侵襲的人工呼吸が妥当である
特に、NIV開始後もpHが改善しない、意識が悪化する、呼吸努力が強いまま、という場合は危険です。
「NIVを始めたから大丈夫」ではなく、「NIVで改善しているか」を見続ける必要があります。
NIVは、挿管を避けるための魔法ではありません。
改善しないNIVを続けると、挿管のタイミングを逃すことがあります。
瞳孔・縮瞳・徐脈だけで判断してよいのか
よく「CO2ナルコーシスで特異的な瞳孔所見はありますか?」と質問されます。
実際、CO2ナルコーシスでは自律神経の変化により初期散大→末期縮瞳と耳にしたこともあります。
結論から言うと、瞳孔所見だけでCO2ナルコーシスの有無を判断するのは危険です。
CO2貯留により脳血流や頭蓋内圧、神経活動に影響が出ることはあります。
しかし、縮瞳がCO2ナルコーシスに特異的な所見として確立しているわけではありません。
意識障害と瞳孔異常がある場合は、CO2ナルコーシスだけでなく、以下も同時に考えます。
- オピオイド中毒(鑑別に挙げることが重要)
- 睡眠薬・鎮静薬
- 脳幹病変
- 脳出血
- 低酸素脳症
- 低血糖
- 代謝性脳症
- 頭蓋内圧亢進
CO2ナルコーシスを疑うとき、瞳孔は「参考所見」にはなります。
ただし、診断の軸はあくまで、意識状態、呼吸状態、血液ガス、背景疾患です。
CO2ナルコーシスの原因はCOPDだけではない
CO2ナルコーシスというとCOPDを連想しやすいですが、原因はCOPDだけではありません。
CO2がたまる本質は、酸素化ではなく換気の問題です。
肺胞換気が低下すれば、さまざまな病態で高CO2血症が起こります。
よく見る原因
- COPD急性増悪
- 肺炎による呼吸仕事量増加
- 心不全による呼吸不全
- 喘息重積
- 肥満低換気症候群
- 睡眠時無呼吸
- 神経筋疾患
- ALS
- 胸郭変形
- 術後低換気
- 鎮静薬・睡眠薬・オピオイド
ICUで見落としやすい原因
- 人工呼吸器の分時換気量不足
- 死腔換気の増加
- 回路トラブル
- 呼吸筋疲労
- 過鎮静
- 腹部膨満や腹腔内圧上昇による換気障害
救急外来でもICUでも、「COPDだからCO2ナルコーシス」と短絡せず、なぜ今CO2が上がったのかを探します。
よくある質問
CO2ナルコーシスは治りますか?
原因と重症度によります。
酸素の調節、気管支拡張薬、感染治療、利尿、呼吸補助(NIV・挿管人工呼吸)などにより、換気が改善すれば、意識状態が改善することがあります。
ただし、背景疾患が重い場合や、低酸素、ショック、感染、脳疾患が重なっている場合は、予後が悪くなることもあります。
CO2ナルコーシスは死亡しますか?
重症例では死亡につながります。
特に、呼吸停止、心停止、重度アシデミア、意識障害、循環不安定を伴う場合は危険です。
一方で、早期に気づいて換気を支え、原因治療を行えば改善する症例もあります。
酸素投与量はどのくらいにすればよいですか?
酸素流量そのものより、目標SpO2を決めて調節することが大切です。
COPDなど高CO2血症リスクがある患者では、一般にSpO2 88〜92%を目標に調整します。
ただし、重症低酸素、ショック、心停止前、特殊病態ではこの限りではありません。
実際には血ガスと全身状態を見ながら調整します。
CO2ナルコーシスの診断基準はありますか?
CO2ナルコーシス自体に、世界共通の明確な単一診断基準があるわけではありません。
臨床的には、
- 高CO2血症(PaCO2 ≧45mmHg)
- 呼吸性アシドーシス
- 意識障害
を組み合わせて判断します。
急性高CO2性呼吸不全としては、PaCO2上昇とpH低下が重要です。
CO2ナルコーシスで縮瞳しますか?
縮瞳が見られる可能性は否定できませんが、CO2ナルコーシスに特異的で信頼できる診断所見とは言えません。
縮瞳が目立つ場合は、オピオイド、脳幹病変、薬剤、低酸素、代謝性脳症なども必ず考えます。
まとめ
CO2ナルコーシスは、「酸素を入れすぎたら起こる病気」と単純に覚えるより、換気不全の結果として理解した方が臨床で使えます。
大切なのは、以下の5つです。
- CO2ナルコーシスは臨床症候群
高CO2血症、呼吸性アシドーシス、意識障害を組み合わせて考える。 - PaCO2だけで判断しない
pHとHCO3−を見て、急性か慢性か、急性増悪かを考える。 - 酸素は止めるのではなく調節する
低酸素を避けつつ、高CO2血症リスクではSpO2 88〜92%を目安にする。 - 換気を支える
NIVや挿管人工呼吸を適切なタイミングで考える。 - 原因を探す
COPDだけでなく、肺炎、心不全、薬剤、神経筋疾患、人工呼吸器設定などを考える。
CO2ナルコーシスを疑ったら、SpO2の数字だけで安心せず、血液ガスを取り、患者さんの呼吸努力と意識状態を見ながら、換気をどう支えるかを考えることが大切です。
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